日本固有の雑節
・ 土用は夏だけではない
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土用とは、日本固有の五行に由来する暦の雑節である。
五行では、春に木気、夏に火気、秋に金気、冬に水気を割り当てている。残った土気は季節の変わり目に割り当てられ、これを「土用」と呼んだ。季節の変わり目の移行準備期間とも考えられる。
土用は四立(立夏・立秋・立冬・立春)の直前約18日間であるが平気法と定気法で日にちは異なる。
太陽の動きに同期するために二十四節気が生まれた。二十四節気を決めるのに冬至から翌年の冬至までの時間を24等分して導き出す平気法と、黄道と天の赤道の交点すなわち春分点を基点として黄道を24等分し太陽の通過を基準に定めた定気法があった。当初は平気法が使われたが天文学の発展とともに中国の隋の時代に定気法が提唱され主流となった。
平気法では四立(立夏・立秋・立冬・立春)の直前18日間を土用と定めた。定気法では横道の角度で定義され四立(立夏・立秋・立冬・立春)の直前18度(360度/5行/4季節)以内を土用と定めた。このため年や季節によって17、18、19日となる。
なお、日本では天保暦(1844年)から定気法で暦が作られた。現在、国立天文台が定気法で求めた土用を使用している。
江戸中期、塙保己一の『假名暦略註』に
「どよう 漢字土用 土用とは、土の氣始て事を主どるの日也、凡一歳の内、五行の氣互に循環して以て四時をわかち、もつて歳序をなす也、春は木氣事を主り、夏は火氣事を主り、冬は水氣事を主どる、毎氣七十三日有奇を主どる也、唯土は中央に有て、四季に應じて、各十八日有奇を主どる也、其始之事を主どる日を土用の入とす、」
土用
・ 土用の忌み事
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土用は、陰陽道の神、土公神(どくしん・どこうしん)という土の神が支配する期間であったので土を動かす作業は忌み嫌われた。特に、土公神は春は土間にあった竈(かまど)、夏は門、秋は井戸、冬は庭にいるとされ、これに関する作業は特に避けられた。
しかし、いろいろ支障があるので着工をしてはいけないという風に変化してきた。
江戸中期、塙保己一の『假名暦略註』に
「どよう 漢字土用 [中略] 都て土用の中は、造作、修造、柱立、礎或土を動かし、井を掘、壁ぬり等、一切土を犯すに惡し、一説に、土用の間日あれども信用するに足らず、故に新暦にも註せざる也、
・ 土用の間日
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土用の間日(どようのまび)は、土用の期間の中で土作業が許される特別に設けられた日。土用の間日には、土公神は文殊菩薩に招かれて天上に行くので、地上にはいなくなるという。18日という長期の不便を解消する知恵と考えられる。
季節ごとの土用について、十二支の日で決まっている。
春:巳・午・酉
夏:卯・辰・申
秋:未・酉・亥
冬:卯・巳・寅
土用
・ 土用の丑の日
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土用の丑の日(どようのうしのひ)は、土用の間のうち十二支が丑の日である。特に夏の土用の丑の日をさすことが多い。
土用は約18日間なので1回の土用の期間中の1日か2日に丑の日がある。2日ある場合一の丑・二の丑という。
夏の土用の丑の日に鰻を食する風習が定着している。
・ 中国の五行をもとにした四季と月
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中国でも五行の木・火・金・水が春夏秋冬に配置されている。土は万物が生まれるところとして四季全体を司る。
また、1年は十二支が割り当てられた12か月からなり、季節は3つの月からなる。各季節の第1と第2月目はその季節の五行が割り当てられ、第3月目は土が割り当てられる。
春(木):寅(木)、卯(木)、辰(土)
夏(火):巳(火)、午(火)、未(土)
秋(金):申(金)、酉(金)、戌(土)
冬(水):亥(水)、子(水)、丑(土)
行事など
・ 土用の丑の日に鰻
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鰻が夏バテに効果があることは万葉の時代から知られていた。
『万葉集』の大伴家持の歌(巻十六の三八伍三)
「石麻呂に吾(われ)物申す夏痩せに良しといふ物ぞ鰻(むなぎ)漁(と)り食(め)せ」
[石麻呂に私は言った、夏痩せにはウナギが良いという、漁ってきて食べなさい]
丑の日に関しては諸説あるが最も有名なのが平賀源内説である。鰻屋が、夏は売れない鰻を何とか売るため源内に相談に行ったところ「本日丑の日」と書いて店先に貼ることを勧められた。すると、その鰻屋は大変繁盛した。その後、他の鰻屋もそれを真似るようになり、土用の丑の日に鰻を食べる風習が定着したという。
もともと、鰻の旬は秋から冬であり「寒中丑の日」に鰻を食べる習慣があった。寒中は十二支で丑に当たるため「寒中丑の日(丑丑の日)」が特別な日となったと考えられていた(女子が紅を買う日でもあった)。
江戸時代の『東都歳事記』に
「寒中丑の日、丑紅と號て、女子紅を求む、諸人鰻?(ウナギ)を食す、」
寒中とは反対の暑中には鰻が売れないのは当たり前であったが「丑の日」とすることで「寒中丑の日」の連想を誘ったと考えられる。
深川八幡社「めいぶつ大かばやき」『江戸名所百人一首』
「江戸前 大蒲焼」の店『江戸見世屋図聚』
勝川春亭画「江戸大かばやき」
・ 土用波
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土用波とは、古くから漁師の間などで知られていた「夏の土用」の時期に発生する大波のこと。これははるか数千キロメータの南方の台風に伴って発生した波浪がうねりとなって伝ってきたもの。波頭が丸く波長が長いうねりは遠くまで伝搬し、台風より速い速度であるため海岸では天候とは関係なく大波となる、。さらに台風が近づくと押される形で大きな波が伝搬されるので台風発生の多い土用の頃に多く現れる。
土用波
・ 土用干し
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土用干し(どようぼし)は、夏の土用の時期に行われる年中行事。
1.夏の土用のころに衣類や書籍を風をよく通し陰干しすることで虫やカビがつくことを防ぐために行う。虫干しともいう。
2.田の水を抜くことによって、強い稲を育て、秋に豊かな実りをもたらす
3.梅干しの製造工程で7月20日前後の、晴天が続く日を選び、梅と、赤梅酢を絞った赤紫蘇をざるにあけて、3日間、屋外で干す
豊国「十二月の内 水無月 土用干」
梅しごと~土用干し編~「Asian Style BLOGGIN'」
http://asianstyle.seesaa.net/article/103826128.html
引用、参照
本記事は個人的にインタネットでアクセスした情報をまとめたものです。
図に関しては引用元を記述しましたが文章は個別に引用文献を明示していません。
文章は下記を参照しています。
[ 1] Wikipedia、コトバンク、Weblio辞書
[ 2] 歳時部[ 3] WEB日本語
来歴
主な来歴。「てにおは」など軽微な修正は管理者の判断で来歴に載せないこともあります。
[2016.05.14] ORIGINAL