子供の無事成長を感謝し祝う三つの行事、「髪置（かみおき）」、「袴着（はかまぎ）」、「帯解（おびとき）」が由来。
「髪置」は平安時代末期から行われた、幼児が頭髪を剃ることをやめて伸ばしはじめるときの儀式。綿帽子、白髪になぞらえた白糸などを頭上に置いて祝う。公家では２歳で，武家では３歳にこれを行った。
「袴着」は平安時代には行われていた、初めて袴を着ける儀式。男女の別なく３歳から７歳の間に吉日を選んで行われたが，江戸時代には５歳男児のみとなった。
「帯解」は室町時代すでに行われていた、子どもに初めて帯を用いる祝いの儀式。子どもを恵方に向かって立たせ，付帯のない着物を着せて帯を結ぶ。男子は５歳，女子は７歳に行う。
昔は、乳幼児の死亡率は高く、｢七歳までは神の子｣｢七つ前は神のうち｣と言われ７歳まで無事に育つことは祝うべきことであった。。


髪置、儀式風俗図絵から（金沢大学資料館）http://library.kanazawa-u.ac.jp/files/event/shihan/midokoro/zue.html

袴着、儀式風俗図絵から（金沢大学資料館）http://library.kanazawa-u.ac.jp/files/event/shihan/midokoro/zue.html

天和元年（1681年）十一月十五日に徳川綱吉の長男、徳川徳松（1679年-1683年）の健康を祈って始まったとされる。
徳松は父綱吉が四代将軍家綱の継嗣となったため、２歳で家督（館林徳川家）を継いだが５歳で夭折した。天和元年というのは徳松は数えで３歳である。
この後、七五三の祝いは町民文化の興隆とともに民衆に広まっていった。
３歳男女の「髪置」、５歳男子の「袴着」、７歳女子の「帯解」が江戸、関東に定着し、京都、大阪と全国に広がっていく。


七五三祝ひの図歌川豊国（三代）画　弘化頃（1844～1848）刊

江戸末期にある呉服屋が「髪置」「袴着」「帯解」の三つの行事を一つにして「七五三」と呼んで宣伝に用いた。以後、呉服屋によって七五三が広まっていく。

易経では一年の月に十二の卦（か）が配される。十月に陰が極まり，十一月は一陽が返ることから一陽来復という。また、二十四節気の陰陽では冬至が陰の極みとなっておりその冬至の起こる十一月は陽が始まる月である。今後の無事成長を祈願する吉月である。


十二月の卦Wikipediaから編集

宣明暦国立天文台図書館　http://library.nao.ac.jp/kichou/open/049/

十一月十五日は古来から使われていた暦の二十七宿の鬼宿日（鬼が出歩かない日）に当たる。鬼宿日は吉日で、嫁取りのほかは万事に大吉とされる日。十一月十五日は唯一、中日（十五日、満月）であり、かつ鬼宿日であるため最吉日とされる。
二十七宿は紀元前からあるインドの占星術・天文学のナクシャトラが基で中国において二十八宿から宿名を割り当て日本に伝来した。月の通り道である白道に２７宿を割り当てる。２７は月の天球に対する公転約２７日に対応する。鬼宿はインド占星術のムリガシラーにあたり、あらゆる事に吉の日とされる。なお、江戸時代に二十七宿は廃止され、天の赤道を基にした中国起源の二十八宿を基にした暦、宣明暦に改訂された。


二十七宿Wikipedia

産土神（うぶすながみ）は生まれた土地の神（氏神とは異なる地縁の神）。中世以後，生児は初宮参りさせ，氏子入りの承認を受けた。また誕生日，七五三などに産土詣(もうで)をした。


霜月行事、絵本物見岡　中下巻から（絵双紙屋）http://www.geocities.jp/ezoushijp/monominookashita.html

七五三江戸府内絵本風俗往来（明治38年刊）から編集（近代デジタルライブラリー）http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/767856

江戸時代元禄・宝永の頃、浅草の飴売り七兵衛が売り歩いた細長い紅白の「寿命糖」が始まりとされている。七兵衛は「千年千年、三千年」と囃し立てながら産神まいりの親子に売っていたが、のちに「千歳飴」として浅草寺境内で売り出し、七五三の縁起物となった。
子の長寿を願い、細く長い（一般的なサイズは直径1㎝、長さ15㎝）。縁起が良いとされる紅白の飴がある。飴は、鶴亀や松竹梅などの縁起の良い図案の描かれた袋に入れられている。


七五三祝ひの図（一部）歌川豊国（三代）画　弘化頃（1844～1848）刊

Wikipedia

産神（うぶかみ）は妊婦と生児を守ってくれるということで信仰された神。日本では産は忌であり神詣りは遠慮するが，産神だけは産神は出産と同時に産屋の忌のなかへ入って守ってくれるものと信じられていた。産神は三日目か七夜には産屋を立つといわれる。

誕生から七日目の夜に、子供の命名をし、健やかな成長を願うお祝いである。平安時代からつづく民俗行事で、名前を書いた紙、命名書、を神棚や床の間に貼り、家の神様に誕生を報告し守護を願った。命名書は初宮参りまでの約1ヶ月間飾られた。
名付けは祖父母や親せきの長寿者が行った。名付け親は命名書を奉書に書き届けた。
母親の床上げも行われ、寝床から離れることができるようになる日でもあった。

誕生から約一月後に、子供を連れて初めて神社にお参りし、生まれた土地の神、産土神（うぶすながみ）、に誕生を報告し無事な成長を願った。また、お参りをすることで産の忌明けとし、普通の生活に戻ることができた。
弱い赤ちゃんを連れていくので氏神ではなく産土神さまにお参りしたのである。氏神は氏の神様なので必ずしも生まれた土地にあるわけではなかったからである。
お参りの仕方は地域や家によって異なっている。典型的なしきたりは、男の子は誕生から三十一日目、女の子は三十三日目に、父方の祖母が抱いて両親とお参りした。お参りするまでは産の忌が明けないので祖母が赤ちゃんを抱いた。
赤ちゃんを包む産着（うぶぎ）は母方が用意した。産着は男の子は鷹や鶴などのおめでたい絵柄（熨斗目模様）、女の子はちりめんの花柄の祝い着である。背後から魔物が入ると考えられていたので、背縫いがない一つ身の着物で背中に「背守り」といわれる魔除けの縫い取りをつけた。


宮参り見立十二支 戌 神田明神宮参り　橋本周延　明治26年　{江戸東京博物館} http://digitalmuseum.rekibun.or.jp/edohaku/app/collection/

誕生から百日目に、お膳を用意し食べる真似を行い、食べることに一生困らないようにと願う儀式。「百日（ももか）の祝い」とも呼ばれる。
子供の長寿を願い、祖父母や親せきの長寿の者が食べさせていた。
お膳は母方が用意することもあったが家紋をつける場合は嫁入り先の家紋を使った。地域によっては、丈夫な歯を願いお膳に小石を一緒に載せ、小石に触れた箸で歯茎をなでるところもある。


食初（一部）儀式風俗図絵 [金沢大学資料館] http://library.kanazawa-u.ac.jp/files/event/shihan/midokoro/zue.html

男の子なら最初の端午（五月五日）、女の子なら最初の上巳（三月三日）が祝われる。産の忌を嫌い、初宮参りの後の最初の節句が祝われる。
仲人・名付け親などが招かれる。毎年節句に飾ることになる鎧兜・武者人形や雛人形などが最初に飾られる。これら人形は母方が用意するものであった。

男女の別なく２、３歳に、櫛や鋏で髪をなで白髪と呼ばれる綿帽子や白糸などを頭上に置いて、赤子から子供になる節目を祝いその子の長寿を願う儀式。この日以降子供の頭髪を剃ることをやめて伸ばしはじめる。髪立，櫛置などともいう。平安時代末期から行われ、公家では２歳で，武家では３歳の吉日に行った。

伊勢貞丈『貞丈雑記』に

髪置の祝は。菅糸(すがいと)にてしらがを作り、ひろぶたにすえ、松山・たち花の作り枝を本の方紙に包み〈木の花包につつむ〉、しらがの上に置き、打乱箱(うちみだりばこ)にびん具を入れ持出して小児を吉方へ向わせ、しらがをかぶらせ申し、櫛を取りて左のびん三かき、右のびん三かきかく体をして〈ゆい付くるにはあらず〉櫛を納め退く。扨御祝あり。小児三のとしの祝なり。


髪置 （右の女性が白髪を持つ）鳥居清長の「風俗東之錦」（天明三、四年（1783、4年）頃）から [落語大好き] http://rakugo-fan.at.webry.info/201410/article_3.html

髪置 『貞丈雑記』一之上、伊勢平蔵貞丈、天保14(1843) [国立国会図書館デジタルライブラリ] http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2583434
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男女の別なく３歳から７歳の間に、初めて袴を着ける儀式。七五三の三つの儀式のうち最も古く平安時代から行われていた。　平安時代は３歳の儀式であったが髪置が行われるようになった平安時代末期からは５歳や７歳のの記述も見られる。江戸時代には５歳男児のみとなった。

源氏物語、桐壺に

　　　この御子三つになりたまふ年、御袴着のこと一の宮のたてまつりしに
　　　劣らず、内蔵寮、納殿の物を尽くして、いみじうせさせたまふ。

伊勢貞丈『貞丈雑記』に

はかま着は小児七のとしなり。小きすおうを広ぶたにすえて持参し、小児を吉方に向わせ申してはかまばかりを取りてめさするなり。はかまばかりめさするは、おさなき人なる故、上をば略するなり。これ、すおうの着初なり。大名などの子息、すいかん・長絹などをもめさするなり。この時も下ばかりなり。これは男子ばかりなり。
〔頭書〕はかまぎの時えぼしはかぶらせず。えぼしは元服の時かぶり初むる事なり。　『貞久記』に「はかまぎの事、たぶん五の時はかまきせ申候。はかま・かたぎぬの紋、松竹鶴亀を付申候」とあり。又云う「家の紋をも付るなり」。『水左記』「承保二年八月十六日、今日東宮御着袴時三歳」。『玉蔡』「承久二年十一月五日、　　此日皇太子御着袴二歳」。


袴着 鳥居清長の「風俗東之錦」（天明三、四年（１７８３・４）頃）から [落語大好き] http://rakugo-fan.at.webry.info/201410/article_3.html

袴着 『貞丈雑記』一之上、伊勢平蔵貞丈、天保14(1843) [国立国会図書館デジタルライブラリ] http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2583434
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５歳または７歳に、子供に初めて付帯（紐）のない着物を着せて帯を結び、紐がなくとも帯が結べる齢になったけじめの儀式。「帯直し」「紐解」ともいう。幼児の終了を祝う儀式である。
室町時代に将軍家で行われていたが江戸時代に町民への広がりとともに７歳女子の儀式となっていく。

伊勢貞丈『貞丈雑記』に

帯なおしの祝を今は帯ときの祝と云う。これは小児を吉方に向わせ申し、付け帯なき小袖をめさせ帯をして参らするなり。広ぶたに小袖帯をすえて出してめさするなり。殊なる儀式もなし。小児五のとしの祝なり。男女同じ


帯解 鳥居清長の「風俗東之錦」（天明三、四年（1783、4年）頃）から [落語大好き] http://rakugo-fan.at.webry.info/201410/article_3.html

帯解 『貞丈雑記』一之上、伊勢平蔵貞丈、天保14(1843) [国立国会図書館デジタルライブラリ] http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2583434
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１２－１６歳の男子が、髪形と服装を改め，初めて冠をつける成人の儀式。初冠，加冠，烏帽子着ともいう。また、それまでの幼名を廃して元服名（諱）を新たに付ける。
冠礼としての成人式は，中国古代の儀礼に倣った　日本古代では天武１１年(682年)に規定された男子の結髪加冠の制が決められた。氏神の社前で大人の服に改め、総角（角髪（みずら））と呼ばれる子供の髪型を改めて大人の髪である冠下の髻（かんむりしたのもとどり）を結い、冠をつける。
公家から武家に広まり、烏帽子親（加冠）により烏帽子をつける。童髪から成人用の髪に結い直す役を「理髪」、髪上げ道具及び切り落とした髪を収納するための箱を取り扱う役を「打乱（うちみだり）」、櫛で髪を整えるために用いる湯水を入れる器である?坏を扱う役を「?坏（ゆするつき）」と称した。
室町時代以降は民間にも普及した。江戸時代頃からは公家を除き、武家、庶民の間では月代(さかやき)を剃り、袖止(そでとめ)を行うのみになった。